

アクリル絵の具を買いに画材店へ行くと、棚に並んだ「透明」や「不透明」の文字に戸惑う方は少なくありません。
実は、この「透明度」の違いを理解せずに絵の具を選んでしまうと、「何度塗っても下の色が見えてしまう」「色が濁って汚くなってしまった」といった失敗を招く原因になります。
この記事では、透明・不透明の決定的な違いから、初心者でも失敗しない選び方、プロが実践する使い分けのテクニックまでを完全網羅しました。
この記事を読み終える頃には、あなたが描きたい理想の作品に最適な絵の具がどちらなのか、自信を持って選べるようになっているはずです。
アクリル絵の具の「透明度」が作品に与える大きな影響
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透明・不透明による「光の通り方」の違い
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チューブの記号で見分ける具体的な方法
アクリル絵の具には、向こう側が透けて見える「透明」なタイプと、下の色を完全に覆い隠す「不透明」なタイプがあります。
これらは単に「好み」の問題ではなく、塗り方や仕上がりの質感を左右する重要なスペックです。
透明・不透明とは?基礎知識と「隠蔽力」の意味
「透明」な絵の具は、光を通す性質があるため、重ねた色が下の層と混ざり合って見えます。
一方、「不透明」な絵の具は光を遮る性質(=隠蔽力)が強く、下の色をリセットして上書きすることができます。
【図解】チューブの 記号で簡単に見分けるチェックポイント
多くのメーカーでは、チューブに小さな「四角いマーク」を記載しています。
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■(黒塗り):不透明。 下の色を完全に隠す。
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◩(半分塗り):半透明。
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□(白抜き):透明。 下の色が透けて見える。



(T)Transparent:透明 (S)Semi-Transparent:半透明
(S)Semi-Opaque:半不透明 (O)Opaque:不透明

【徹底比較】透明タイプと不透明(ガッシュ)の決定的な違い
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技法や画風による向き・不向き
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乾燥した後の表面の質感の差
同じ「アクリル」という名称でも、透明タイプと不透明タイプでは、含まれる顔料の量や添加剤が異なります。
これにより、見た目の鮮やかさや表面の質感が大きく変わります。
重なりを楽しむ「透明タイプ」:水彩風や重厚な油彩表現に
透明タイプは、セロハンのように色を積み重ねることで、深みのある色彩を作ることができます。
水で薄めれば水彩画のような繊細な表現ができ、厚塗りすれば油絵のような光沢感を出すことができます。
ムラなく塗れる「不透明タイプ」:イラストや平面構成に
不透明タイプ(アクリルガッシュなど)は、顔料が濃く配合されており、一度塗りでパキッとした色が出ます。
ポスターやキャラクターイラストなど、均一でフラットな面を作りたい場合に最適です。
乾燥後の質感の差(ツヤあり vs マット)
一般的に透明タイプは乾燥後に適度な「ツヤ」が出ますが、不透明タイプ(ガッシュ)は光を反射しない「マット」な質感に仕上がります。

アクリル絵の具(透明タイプ)は下地の黒がくっきりと見えているが、アクリルガッシュ(不透明タイプ)は下地の黒を完全に隠蔽している。

どっちを買うべき?目的別の選び方ガイド
初心者が最初に揃えるならどっち?
一般的には「不透明タイプ(アクリルガッシュ)」の方が、失敗した箇所を上から塗りつぶして修正しやすいため、初心者には扱いやすいとされています。

風景・写実画に向いているタイプ
空のグラデーションや、複雑な光を表現したい場合は「透明タイプ」が向いています。

アニメ塗り・デザインワークに向いているタイプ
ムラを嫌うアニメ塗りや、ロゴデザイン、ポップアートには「不透明タイプ」が必須です。



左は学生時代にアクリルガッシュで制作したポスターで、ベタが綺麗に塗れています。
右はアクリル絵の具で制作した作品です。
特に目の部分は重ね塗りが分かりやすいと思います。
【実践】プロが教える透明・不透明の使い分けテクニック
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光の輝きを出す「グレージング技法」
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透明と不透明を混ぜた時の変化
上級者は一つの作品の中で両方を使い分けています。
下地を活かす「グレージング技法」のやり方
あえて不透明な白で陰影を描き、その上から透明な色を薄く乗せることで、複雑な輝きを出す技法です。

先ずは土台づくりから。
グレーズは「明るい色の上に暗い透明色を重ねる」のが基本です。
背景のベージュとバナナのイエローを塗っていきます。

明暗を描き込んでいきます。
この時に細部は描き込まず、大まかな明暗を付けていきましょう。

土台が完成したら色をのせていきます。
バナナの青みがかかった部分や茶色っぽい部分を水で薄めた絵の具でのせていきます。


ヘタの部分など細部を描き足していきます。

この段階で小さな茶色の点を描き、その上からさらに極薄くイエローでグレーズすると、点がバナナ表面に馴染んでリアルに見えます。
細部までしっかりと描いていきましょう。

影を入れていきます。
設置面はほぼ絵の具のままの混色で、影の薄い部分はジェルメディウムを混ぜて薄めて塗っています。
バナナと背景の境界に少し被せるように背景色のベージュを薄く塗ると空気感が出ます。

完成です!

失敗した箇所を修正するなら不透明が最強
透明絵の具で描いていて色が濁ってしまった場合、一度不透明な色でリセットしてから描き直すテクニックがあります。
完全に乾く前に上から塗り重ねると、下の色が剥がれてしまう場合もあります。
透明と不透明を混ぜて使う際の注意点
混ぜる際は慎重に行いましょう。
やってしまいがちな失敗例と解決策

「広い面がムラになる」のは透明絵の具の特性かも?
透明絵の具でベタ塗りをしようとすると、筆跡が重なった部分だけ色が濃くなり、どうしてもムラになります。

「色が濁る」原因は不透明の重ねすぎにある
不透明な色を何度も塗り重ねると、画面が厚ぼったくなり、透明タイプのような「色の奥行き」が消えてしまいます。
透明タイプの絵の具で上から修正するのは結構難しいと思われがちですが、アクリル絵の具の中でも「■(黒塗り):不透明」タイプの絵の具を使えば修正も可能です。



このようにアクリル絵の具でも不透明タイプを使えば下の影響を消して塗り重ねることができます。
よくある質問(FAQ)
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Q:アクリルガッシュは「不透明アクリル」と同じ?
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A:厳密には異なりますが、実用上は「不透明なアクリル絵の具」として扱われます。
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Q:後から透明度を変える方法はありますか?
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A:ジェルメディウムなどを混ぜることで、不透明な色に透明感を持たせることは可能です。
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Q:透明なアクリル絵の具をムラなく塗る方法は?
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A:混色の場合は多めに色を作っておきましょう。筆を止めずに一気に塗る、一定の筆圧と速度を保つ、完全に乾いてから別の方向で二度塗りをするなどの方法があります。
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まとめ|特性を理解して理想 of 表現を手に入れよう
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アクリル絵の具(透明タイプ)がおすすめな場面
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風景や静物などの描写をしたい
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グラデーションを表現したい
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油絵のような厚塗りをしたい
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アクリルガッシュ(不透明タイプ)がおすすめな場面
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ポスターやイラストを描きたい
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反射しないマットな仕上がりにしたい
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劇の背景など、一気に広い面を塗りたい
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アクリル絵の具の「透明・不透明」は、どちらが良いかではなく、自分の表現に合わせて選ぶ道具です。
特性を理解して、あなたの表現の幅を広げていきましょう!
アートライフで人生を豊かに!
それではまた、別の記事でお会いしましょう!











