
こんにちは、デザイナーでアーティストのマキチャリックスです!
画用紙やキャンバスなどに絵を描いていて、絵の上で絵の具が混ざって濁ってしまったりした経験はないでしょうか?
今はあまりないですが、子供の頃なんかは授業で時間の制限があると焦って、絵の具が乾く前に別の色を塗ってしまって色が濁ったりした経験があります。
今回はこのアクリル絵の具が乾く時間や、乾く時間を速くしたり遅くしたりする方法などについて解説していきたいと思います。
絵の具が定着する仕組み

絵を描く時に、絵の具をチューブからパレットに出してキャンバスなどに塗っていくわけですが、絵の具を出した時は半練り状態だった絵の具が時間の経過と共に定着していきます。
これは絵の具に含まれている水分が蒸発して定着するわけです。
アクリル絵の具や水彩絵の具はこの仕組みですが、油絵の具は油を混ぜて使う絵の具なので少し違っていて油と酸素が化学反応することによって定着していきます。
絵の具の種類によって乾燥時間は違う

絵の具にはいろんな種類があります。
私がいつも絵を描く時に使っている「アクリル絵の具」、子供の頃は学校の図画工作で「水彩絵の具」を使っていましたし、中学校では「ポスターカラー」を使っていました。
高校、大学ではデザインを勉強していましたので「アクリルガッシュ」を使っていましたし、「油絵の具」や「岩絵具」などを使っている友人もいました。
このように絵の具にはいろんな種類があるわけですが、そもそも絵の具の違いって何なのでしょうか?
ここではアクリル絵の具、水彩絵の具、油絵の具の違いと乾燥時間を含めた特徴を紹介したいと思います。
アクリル絵の具の特徴

アクリル絵の具は顔料(色の粉)とアクリル樹脂でできています。
このアクリル樹脂がアクリル絵の具の特徴になるわけですが、顔料を定着させる接着剤のような役割を果たしています。
これをバインダー(展色剤)と呼びます。
このバインダーの違いが絵の具の違いになります。
アクリル絵の具は水溶性で水を混ぜて使うことができますし、そのまま使うこともできます。
乾燥するとアクリル樹脂の被膜を作って耐水性となり、ゴムのような感じになってとても丈夫な絵の具です。
乾燥時間は一般的に
薄塗りで20〜30分程度
厚塗りで2〜3時間程度
といわれています。
後で解説しますが、乾燥時間は温度や湿度などの環境によって大きく異なります。
水彩絵の具の特徴

水彩絵の具は顔料とバインダーにアラビアゴムが使われています。
このアラビアゴムアカシアセネガルという木から採れる水性の樹脂です。
水によく溶けて、紙への接着性や色彩も良いため水彩絵の具には欠かせないバインダーとなっています。
水彩絵の具は乾いても耐水性にはならずに、水をつけるとまた滲んできます。

乾燥時間はアクリル絵の具と同じ水分の蒸発によって定着しますので
20〜30分程度といわれていますが、やはり環境や含ませる水の量によって大きく異なります。
水彩絵の具はアクリル絵の具や油絵の具のように厚塗りをすると割れてしまったり、剥がれてしまうので、薄塗りが基本です。
油絵の具の特徴

油絵の具は顔料とバインダーに乾性油でできています。
乾性油にはリンシードオイルやポピーオイルが使われていて、アクリル絵の具や水彩絵の具のように水が乾燥して定着するのではなく、オイルと空気中の酸素が化学変化をすることで定着します。
この違いから乾燥時間も長くなり薄塗りで1日、厚塗りなら6〜7日程度で表面は乾燥しますが、完全乾燥には半年以上かかる場合があります。
油絵の具は乾燥時間がとても長く、重ね塗りをしていく時に下の色が乾いてから塗り重ねていかないと色が混ざってしまうため、下地に速乾性のアクリル絵の具を使用する場合もあります。
アクリル絵の具の上に油絵の具を重ねることはできますが、逆に油絵の具の上にアクリル絵の具を重ねると剥離するので注意が必要です。
油絵の具は色によっても乾燥時間が異なり、1週間程度の差がある場合もあります。
ですので、描き中のキャンバスの中で乾いている部分と乾いていない部分がある場合があり制作には時間がかかるわけです。
環境による乾燥時間の違い

ここまでの解説でも触れてきましたが、乾燥時間は環境によって大きく変わります。
環境とは主に室内であれば室内温度、屋外であれば気温と湿度の影響です。
アクリル絵の具も水彩絵の具も含まれる水分が蒸発することによって定着すると説明してきました。

例えていうなら洗濯物を干した時を考えてみるとわかりやすいと思います。
洗濯物は水分を含んでいて干して乾かしますよね。
薄手のものは早く乾きますし、厚手のものは乾くのに時間がかかります。
絵の具でいう薄塗りと厚塗りの違いです。
また、真夏の気温が高い日中の外干しは早く乾くのに対して、梅雨時期の気温が低く湿度が高い環境ではなかなか乾きません。

絵の具も同じですので、乾く時間を単純に表すことが難しいのです。
絵の具を早く乾かす方法

少しでも絵の具を早く乾かしたい時はどんな方法があるでしょうか。
ここではその方法や、ちょっとした工夫で時短につなげる方法を紹介したいと思います。
ドライヤーや扇風機を使う

水分の乾燥によって絵の具が定着するわけですから、ドライヤーや扇風機などの風によって物理的に乾燥させてあげれば早く乾きます。
ただし、注意点があります。
早く乾かしたいからといってドライヤーの熱風を近距離で当て続けると、熱で絵の具が変質してしまってひび割れを起こす可能性があります。
なるべく冷風で画面からの距離も30cm以上離すようにしましょう。
また1箇所に集中して当て続けるのではなく、全体を満遍なく当てるようにしましょう。
冷風だからといってドライヤーを近づけてしまうと、乾いていない絵の具が飛び散ったりして逆効果なんてことも起こりかねません。
乾きにくい梅雨時や冬の気温が低い時期なんかに下地を前面に塗った後、扇風機を少し離れたところから首振りで当てておけば効率的ですよね。
薄塗りで重ね塗り
絵の具は厚塗りすると乾燥に時間がかかります。
逆にいえば薄塗りで重ね塗りをしていくことで早く色を重ねていくことができるわけです。
もちろんこれは仕上がりが厚塗りとは違うので、乾燥時間を早めるためだけに使う方法ではありません。

作品の仕上がりイメージに合わせて取り入れてください。
時間の使い方

例えば休みの日に朝から絵を描こうと計画したとします。
朝からキャンバスに下地やベース色などを塗って乾くのを待つのも悪くないですが、前日にその工程だけやっておければ朝には乾いているのですぐに制作に取りかかれたりします。
私もモデリングペーストを使った作品や厚塗りをする場合などは平日の夜1時間だけ使って進めておくなどの工夫をしています。

なるべく待つ時間を減らせるような工夫をすると効率的で時短になりますね。
早く乾かすメリット
なんといっても制作時間の短縮が1番のメリットではないでしょうか。
アクリル絵の具であれば速乾性なのでどんどん描き進めていけますし、サイズや塗り方などにもよりますが1日で完成なんてこともあります。
重ね塗りも何層もできて深みのある絵も早く完成させることができます。

小さめのドライヤーを常に近くに置いて絵を描くのも良いかもしれませんね。
早く乾くデメリット

今回はわざわざ早く乾かしているので、メリットを生かしているのですが、アクリル絵の具は速乾性で乾くと耐水性になる特徴はメリットだけではありません。
最も気をつけなければいけないのは絵の具のついた筆が固まってしまってダメになる。
パレットに出した絵の具が固まってしまうなど。
これらは特徴を知った上で対処ができます。
まず筆は絵の具が固まらないように、こまめに洗ったり水につけておきましょう。
パレットには使う分だけ絵の具を出すようにしましょう。
パレットに出した絵の具にスプレーなどで水を吹きかければ乾燥で固まるのを防ぐことができます。

また、パレットはプラスチック製のものですと絵の具が固まって使えなくなったりするので、紙パレットや陶器製のパレットを使うことをお勧めします。
絵の具の乾燥を遅らせる方法

速く乾かすだけがメリットではなく、乾燥を遅らせたい場合もあると思います。
広い面を混色で塗りたい場合や、乾く前にグラデーションをかけて塗りたい場合などもあると思います。
ここでは絵の具の乾燥を遅らせる方法について紹介していきます。
メディウムを使って乾燥を遅らせる
メディウムとは絵の具の特性や質感を変えたりする画材で様々な種類があります。
乾燥を遅らせる目的で使用するメディウムは「リターディングメディウム」や「リターダー」といったものがあります。
絵の具に混ぜて使うことで乾燥を遅らせることができて作業時間を長くすることができます。
リターディングメディウムは粘度が高く、リターダーは水のようにサラっとしているのが特徴です。
目的に応じて使い分けましょう。

ホルベイン アクリリックメディウム AM574 180ml(乾燥智遅延・ぼかし用メディウム)リターディングメディウム 14574

ターナー色彩 メディウム U-35 リターダーメディウム UA250965 250ml, 無色
乾燥を遅らせるメリット
広い面にグラデーションをかけて塗りたい時など、速く乾いてしまうと絵の具が綺麗に混ざらないので、グラデーションも綺麗に表現できないなどの場合に、乾燥を遅らせて綺麗なグラデーションを表現できます。
また、リターディングメディウムを使って筆跡の残らない平滑な面を仕上げたり、油絵のような厚塗りを表現したりすることもできます。
水のようにサラっとしたリターダーを使えばパレット上で絵の具の乾燥を防いだり、ウェット・イン・ウェット技法や水彩画のようなぼかしのタッチも表現がしやすくなります。
乾燥を遅らせるデメリット
乾燥が遅いデメリットはやはり制作時間が長くなるという点だと思います。
油絵の具は乾燥に時間がかかるので制作時間か長くなりますが、色彩のぼかしや調整がしやすく奥行きと深みのある表現ができるという点で魅力のある絵の具です。
まとめ
今回は絵の具が乾く時間を中心に解説してきました。
ドライヤーや扇風機を効果的に使用することで時短になったり、メディウムを使用することで乾燥時間を遅らせたりできます。
アクリル絵の具の特徴である速乾性や乾くと耐水性になる点はメリットでもあり、場合によってはデメリットにもなると思います。
しかし、知識があればある程度コントロールができて表現の幅も広げることができます。
どの絵の具が良くて、どの絵の具が良くないということではなくて、それぞれに特徴があり、メリットとデメリットがあると思います。
自分が表現したい作品に合う絵の具を選んで、絵を描くことを楽しむことが最も大切なことだと思います。
アートライフで人生を豊かに!
それではまた、別の記事でお会いしましょう!
この特徴を生かしたにじみなどの技法を使うことができます。